第 5 回 回路の接続と特性(3)

本日の内容


5-1. 宿題の解答

問題

  1. 次の回路の電圧利得を求めよ。但し、トランジスタのモデルは h パラメータを使用し、 h1 2=0, h2 2=∞ と近似しなさい。
  2. 求めた電圧利得が、次の値の変化によりどのように変化するかグラフによ り図示しなさい。
    1. RE
    2. h2 1

ヒント1

この回路の等価回路はつぎのようになります。

ヒント2

RE に流れる電流は (1+h2 1)IB になるので、V1IB の関係は次のようになります。


V_1 = h_{1 1}I_B+( 1 + h_{2 1})I_B R_E

I_B = frac{1}{h_{1 1}+(1 + h_{2 1})R_E}V_1

解答

V2は次のように IB で表すことができます。


V_2 = R_L frac{R_C}{R_C + R_L}h_{2 1} I_B

従って、ヒント2 で求めた IB を代入す ると電圧利得が求まります。


V_2 = R_L frac{R_C}{R_C + R_L}h_{2 1} frac{1}{h_{1 1}+(1 + h_{2 1})R_E}V_1

A_v = frac{R_L R_C}{R_C + R_L}frac{h_{2 1}}{h_{1 1}+(1 + h_{2 1})R_E}

REとの関係

電圧利得は次のように書き直せます。


A_v = frac{R_L R_C}{R_C + R_L}frac{h_{2 1}}{h_{1 1}}frac{1}{1 + frac{1
+ h_{2 1}}{h_{1 1}} R_E}

従って、REh1 1/(1 + h2 1) に対して十分小さい時は、電圧利得は RE とはほぼ無関係な一定の値 
frac{R_L R_C}{R_C + R_L}frac{h_{2 1}}{h_{1 1}}
になります。

一方、REh1 1/(1 + h2 1) に対して十分大きい時は、電圧利得は次のようになります。


A_v simeq frac{R_L R_C}{R_C + R_L}frac{h_{2 1}}{h_{1 1}}frac{1}{ frac{1
+ h_{2 1}}{h_{1 1}} R_E}

~ = frac{R_L R_C}{R_C + R_L}frac{h_{2 1}}{1 + h_{2 1}}frac{1}{R_E}

つまり RE に反比例します。

h2 1との関係

電圧利得は次のように書き直せます。


A_v = frac{R_L R_C}{R_C + R_L}frac{1}{R_E}frac{1}{LRparen{ 1 + frac{h_{1
1}}{R_E}}frac{1}{h_{2 1}} + 1}

従って、 h2 1 が 1 + h1 1/RE より十分小さい時は次のようになります。


A_v simeq frac{R_L R_C}{R_C + R_L}frac{1}{R_E}frac{1}{LRparen{1 + frac{h_{1
1}}{R_E}}frac{1}{h_{2 1}}}

~ = frac{R_L R_C}{R_C + R_L}frac{1}{R_E}frac{h_{2 1}}{h_{1 1}+R_E}

従って、 h2 1に比例します。 一方、 h2 1 が 1 + h1 1/RE より十分大きい時は、最後の分数部分はほぼ 1 になるので、電圧利得は次の ようになります。


A_v simeq frac{R_L R_C}{R_C + R_L}frac{1}{R_E}

こちらは h2 1 に無関係な一定の値になります。

5-2. 遮断周波数とコンデンサを含む回路のまとめ

最大電圧に対して 1/√2 倍 (-3dB) となる周波数を遮断周波数と言 います。 今まで求めた電圧利得の式について遮断周波数を求めましょう。

1

この回路では電圧利得は 1 で、電流利得が次の式で与えられました。


frac{1}{1 + j omega C R_L} 
=
frac{1}{1 + j frac{omega}{omega_0}}
 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ 
LRparen{ omega_0 = frac{1}{C R_L} }

この式について遮断周波数を求めます。始めに大きさを求めます。


frac{1}{1+j frac{omega}{omega_0}}
= frac{ 1 - j frac{ omega }{omega_0}}{1^2 + LRparen{frac{omega}{omega_0}}^2}

LRbar{frac{1}{1 + j frac{omega}{omega_0}}} =
frac{1}{1 + LRparen{frac{omega}{omega_0}}^2}sqrt{1 + LRparen{frac{omega}{omega_0}}^2}

~ = frac{1}{sqrt{1 + LRparen{frac{omega}{omega_0}}^2}}

遮断周波数を求めます。


frac{1}{sqrt{2}} = frac{1}{sqrt{1 + LRparen{frac{omega}{omega_0}}^2}}

1 + LRparen{frac{omega}{omega_0}}^2}= 2

LRparen{frac{omega}{omega_0}}^2} = 1

therefore omega = omega_0

従って、遮断周波数は ω0/2π となります。

2

この回路の電圧利得は次の式で与えられました。


frac{1}{1 + frac{1}{j omega C R_L} }
=
frac{1}{1 + frac{1}{j frac{omega}{omega_0}}}
 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ 
LRparen{ omega_0 = frac{1}{C R_L} }

この式について遮断周波数を求めます。始めに大きさを求めます。


frac{1}{1+frac{1}{j frac{omega}{omega_0}}} 
= frac{ j frac{ omega }{omega_0}}{1 + j frac{omega}{omega_0}}

~ = frac{ j frac{ omega }{ omega_0} LRparen{ 1 - j frac{omega}{omega_0}}}{1^2 + LRparen{frac{omega}{omega_0}}^2}

~ = frac{LRparen{frac{omega}{omega_0}}^2 - j frac{omega}{omega_0}} {1^2 + LRparen{frac{omega}{omega_0}}^2}

LRbar{frac{1}{1 + frac{1}{j frac{omega}{omega_0}}} } =
frac{frac{omega}{omega_0}}{1 +
LRparen{frac{omega}{omega_0}}^2}sqrt{LRparen{frac{omega}{omega_0}}^2 +
1}

~ = frac{omega}{omega_0}frac{1}{sqrt{1 + LRparen{frac{omega}{omega_0}}^2}}

遮断周波数を求めます。


frac{1}{sqrt{2}} = frac{omega}{omega_0}
frac{1}{sqrt{1 + LRparen{frac{omega}{omega_0}}^2}}

1 + LRparen{frac{omega}{omega_0}}^2}= 2 LRparen{frac{omega}{omega_0}}^2}

1 =  LRparen{frac{omega}{omega_0}}^2}

therefore omega = omega_0

従って、遮断周波数は ω0/2π となります。

まとめ

これまで取り上げてきた回路と特性をまとめると次のようになります。

回路利得遮断周波数グラフ

A_c = frac{1}{1 + j omega C R_L}

f_0 = frac{omega_0}{2 pi} = frac{1}{2 pi C R_L}

A_v = frac{1}{1 + frac{1}{j omega C R_L}}

f_0 = frac{omega_0}{2 pi} = frac{1}{2 pi C R_L}

なお、コンデンサを含む回路の利得の式の分析と、宿題にあった帰還抵抗と利 得の関係式の分析は同じになりますが、グラフの形は同じではありません。 前者は、式自体は同じ形でも虚数単位を含んでいるため、大きさは平方根など を含む式になります。 実際に同じ座標上にプロットすると次のようになります。

gnuplot での作図

set logscale xy
plot [0.01:100] abs(1/(1+{0,1}*x)), 1/(1+x), 1/x, 1

5-3. 変成器による接続

自己インダクタンスの性質

回路利得遮断周波数グラフ

A_c = frac{1}{1 + frac{R_L}{j omega L}}

f_0 = frac{omega_0}{2 pi} = frac{R_L}{2 pi L}

A_v = frac{1}{1 + frac{j omega L}{R_L}}

f_0 = frac{omega_0}{2 pi} = frac{R_L}{2 pi L}

変成器の等価回路

n:1 の理想変成器は X側とY側の電圧、電 流の関係は nVX = VY, IX = nIY, となります。 但し、変成器は二つのコイルよりなっているので、自己インダクタンスが存在 します。 自己インダクタンスを考慮した等価回路は次のようになります。

等価回路による計算例

次の回路に対して、等価回路によりどのように計算できるか例を示します。

ここで、変成器の左をX、 右をYと呼ぶと次の関係が 成り立ってます。


V_Y = frac{1}{n}V_X , I_Y = n I_X

V_1 = V_X, I_1 = frac{V_1}{j omega L} + I_X , V_2 = V_Y, I_2 = I_Y, V_2
= I_2 R_L

左の回路を右の回路に埋め込んだ場合

VYIY の関係を調べます。 VY = (1/n)V1 ですが、IY は次のようになります。


I_Y = n I_X

~ = n LRparen{I_1 - frac{V_1}{j omega L}}

~ = n I_1 - frac{1}{n} V_1 frac{n^2}{j omega L}

つまり 変成器を取り除いた時、回路に L/n2 が接続しているのと等価になります。

5-4. 宿題

「左の回路を右の回路に埋め込んだ場合」と同様に「右の回路を左の回路 に埋め込んだ場合」の回路を求めなさい。 (ヒント) VXIX の関係を右側の回路の式から導く。


坂本直志 <sakamoto@c.dendai.ac.jp>
東京電機大学工学部情報通信工学科